ミシュラ土地とか機体とかの話、またの名をショートカットの話
2016年9月27日 ゲーム(最初に)
この記事は、ルール上結構細かい話をするので、一般のプレイヤー向けではありません。細かいところを理解したいジャッジなど向けの文章です。
逆にみんなに言いたいのは、マジックは紛らわしい宣言をして相手をだまくらかすゲームではないので、宣言はきちんとわかりやすく行いましょう。相手の宣言がわかりづらかったら、ちゃんと確認しましょう。それでもわからなかったらジャッジを呼びましょう。ということです。
(以下本題)
つい最近Judgeapps(公認ジャッジ用のウェブサイト)の掲示板で、機体とショートカットの話が話題になっていたので、こんなツイートをした。
すると、
という質問があった。ここで改めて整理してみたい。
まずはルールの文章に立ち戻ることから始める。
4.2 イベントでの手順省略
イベントでの手順の省略とは、プレイヤーが特にそう宣言せずにルール上の一連の行動の一部を飛ばすことである。ゲームをスムーズに進行するためには必要であり、これによってルール上の些事にとらわれることなく明確なプレイを行なうことができるようになる。ほとんどの手順の省略は、1回またはそれ以上の回数、暗黙に優先権の放棄を行なうことを含む。優先権の放棄を含む手順の省略を新しく使いたい場合、その宣言の一部として最終的なゲームの状態がどうなるのかを明確にすること。
プレイヤーは、省略されている一連の行動の途中で、どのようにして、またどの時点でその行動から逸脱するのかを宣言し、中断させることができる。この方法で、自分自身の行なっている省略を中断することも認められている。宣言されていない手順の省略を用いたり、一般に用いられている手順の省略を勝手に変更したりして、ゲームを曖昧なものにしてはならない。
プレイヤーは優先権を要求し、何もしないことを選んではならない。何もしないことを選んだ場合、優先権は要求されなかったものとして直前に優先権を持っていたプレイヤーに戻される。
マジックで伝統的に用いられている手順の省略として、以下のものがある。それらから逸脱したい場合、そうすることを明示するべきである。また、例示の中には、暗黙に優先権を放棄することをもたらすという点において上記のポリシーに反するものがある。
(途中省略)
・自分のターンの戦闘前に、「戦闘」「攻撃」などの単語を使った「戦闘入ります」などの宣言をした場合、非アクティブ・プレイヤーが止めない限り、戦闘開始ステップにアクティブ・プレイヤーがパスした、ということを意味する。非アクティブ・プレイヤーは望むならその時点までの任意の時点でパスを中断し、何か行動することができる。
「戦闘入ります」はここから引用した。ルール上箇条書きで定められているショートカットは、基本的にはすでにその意味について合意されているものと見なされる。「それらから逸脱したい場合、そうすることを明示するべきである。」というのはそういうことを意味している。
だから、「戦闘入ります」という発言は、「戦闘開始ステップまで入ってパスします」と言っているのと全く同じ効果をもつ。
相手がそこまで何もしなくてそのショートカットを中断させないのであれば、ゲームの状態は、戦闘開始ステップで相手が優先権を持っている状態になる。
相手が「はいどうぞ」と言ったとすれば、それはすなわち相手がパスしたと言うことだ。
ここで、ゲームは攻撃クリーチャー指定ステップに移る。
ここでやることはまず攻撃クリーチャーを指定することであり、ここで優先権は発生しない。つまりあなたには攻撃クリーチャーを指定する前に機体に搭乗したり土地を起動したりするタイミングはない。
それが、最初のツイートの意味である。
なお戦闘開始ステップに何かしたいのであれば、
「戦闘開始ステップ入っていいですか」とか
「第1メイン終了で良いですか」とか
とか言えば良いのだと思う。でもわざわざ戦闘開始ステップに何かする必要があることなんて滅多にないから(《ゴブリンの熟練扇動者》っていうカードはありますが)、何かやりたかったらメイン中にやってしまうのが一番良いと思う。
じゃあ、なぜブロックの時は順序違いの連続行動が認められるのか?
4.3 順序違いの連続行動
マジックのゲームを厳密に表現することの複雑さに鑑み、完了後の結果が適性で明確な局面を現している場合には、技術的には正しくない順番であっても処理を一連のものとして行なうことは許容できる。
正しい順序で行なったと仮定した場合に全ての行動が適正であることが必要であり、また、対戦相手は必要な時点で対応するために、正しい順序で行なうようにプレイヤーに求めても良い。(その場合、それ以降に行なわれる行動は一旦取り消され、そのまま行動する義務は生じない)。順序違いの連続行動によって決定を遅らせ、本来のタイミングではまだ得られていない情報を利用することができてはならない。
プレイヤーは、順序違いの連続行動の途中で対戦相手の反応を見て利用してはならないし、またやり忘れた事をやりなおすために順序違いの連続行動だと主張することも認められない。一般に、一連の行動を行なった後で手が止まった場合、それで行動が終わったものだと判断され、連続行動は終わりとなってゲームは連続行動終了後の対応する局面に進むことになる。
例:
(E) ブロック・クリーチャー指定を始めてから、《樹上の村》を起動してそれでブロックした。
こういう場面を考えてみる。
「これとこれでアタックします」
「うーんとじゃあこれはこれでブロック、これは変わり谷起動してブロック」
これが典型的な順序違いの連続行動の例である。ここで少し考えてみてほしいことは、この場合防御側はブロッククリーチャー指定ステップに入ることを明示的に宣言していない。1つめの発言が終わった時点で、まだ攻撃クリーチャー指定ステップである。だから、本来はこういう順番の行動はおかしいのだけれど(ステップが戻っているから)、攻撃クリーチャー指定ステップで行うことと、ブロッククリーチャー指定ステップで行うことの一連の行動が単に順番が変わっただけだとして認められる。
先ほどの攻撃の例は、すでに戦闘開始ステップで優先権を放棄していることが明示されている。自分が戦闘開始ステップに優先権を放棄した後に起こることは、順に「相手が優先権をパス」「自分が攻撃クリーチャーを指定」であり、その間にあなたに優先権は一回も来ない。順番が違うのではなく、もう優先権を持っていないからそもそもできないことなのだから、順番云々の前に、そもそもそのタイミングではそういった行動(起動)ができない。
ここまでが普通の話。
ここからがよりめんどくさい話。読者を選ぶかもしれない。本当にめんどくさい話なので、もし議論などあればtwitterなどでなく直接お話ししましょう。どうしても気になってしまったので書く。
じゃあ、防御側が「ブロック入っていいですか?」と相手に確認を求めてから上記の行動をしたらどうだろう。
そもそも「ブロック入って良いですか?」は相手に何を確認しているのだろうか。自分は何をしたものと宣言しているのだろうか。
攻撃クリーチャー指定ステップで攻撃クリーチャーが指定されたら、まず優先権を持つのは攻撃側である。でも普通攻撃側はここで何かすることはない。
「ブロック入って良いですか?」=「あなたは攻撃クリーチャー指定ステップで優先権をパスしますか?」だろうか。でもそういう解釈の場合、
(防)「ブロック入って良いですか?」
(攻)「はいどうぞ」
(防)「じゃあブロック宣言前にまずそれを除去して・・・」
(攻)「えっブロック宣言するんじゃないの」
となるかもしれない。少し日本語としてもやもやする。上記のショートカットがあるからなおさらである(ブロックの方は規定されたショートカットでもなんでもないので単純に日本語としての解釈の問題だが)。
普通攻撃側が「ブロック入って良いですか?」といわれたら、それは「ブロック宣言しますがいいですか」という意味だと取ると思う。それはゲームルール的に言い換えれば、「あなたはパスしますか?それなら私もパスします」と言っているのに等しい。こっちの解釈の方が、まあ自然だと思う。防御側がパスしたらもうブロッククリーチャー指定ステップに入ってしまう。すると上記の攻撃時と同じことが言える。
だから、「ブロック入っていいですか」の後に、「ブロックブロック搭乗ブロック」と言われたら、ちょっと待ってそれ搭乗できるの、と言うかもしれない。
これは、「ブロック入って良いですか」の言い方が、ルールと少し整合していないのが理由なのだと思う。「あなたはパスしますか?それなら私もパスします」と言うのはあまり合理的ではない。だって相手がパスするかどうか聞いてから判断した方がいいから。
たとえば、防御側は単に「なにかありますか」「なにもありませんか」 とか言ったりすればいいのかもしれない。つまり相手がパスかどうかを確認したいわけだから。でも普通は攻撃側は攻撃クリーチャー指定ステップに何かすることは少ないから、何もないようであればその確認すら必要ないことの方が多いかもしれない。
ただ、このあたりはちょっと考えが整理できていない。自分も「ブロック良いですか」とか普通にプレイで言ったりするから。
ただいずれにしても、自分がミシュラ土地であったり、機体であったりをコントロールしている場合は、少し発言には気をつけて、ステップをきちんとイメージして、はっきりとした意思表示をした方が、不利なルーリングになる可能性はぐっと低くなるかもしれない。
興味がある人は僕はBMOの日曜日にジャッジで行くので、そこで捕まえて話しかけてください。
この記事は、ルール上結構細かい話をするので、一般のプレイヤー向けではありません。細かいところを理解したいジャッジなど向けの文章です。
逆にみんなに言いたいのは、マジックは紛らわしい宣言をして相手をだまくらかすゲームではないので、宣言はきちんとわかりやすく行いましょう。相手の宣言がわかりづらかったら、ちゃんと確認しましょう。それでもわからなかったらジャッジを呼びましょう。ということです。
(以下本題)
つい最近Judgeapps(公認ジャッジ用のウェブサイト)の掲示板で、機体とショートカットの話が話題になっていたので、こんなツイートをした。
「戦闘入ります」などのショートカットは、「戦闘開始ステップに優先権をパスする」ことを意味するため、相手に「どうぞ」と言われたら、もう攻撃クリーチャー指定になってしまいます。端的に言えば機体には搭乗できません。ミシュラ土地などと同様なので、ご注意を。
すると、
それは順序違いの連続行動ではないのですか。
(E) ブロック・クリーチャー指定を始めてから、《樹上の村》を起動してそれでブロックした。
これは順序違いの連続行動で認められるのになぜその例ではダメなのですか
という質問があった。ここで改めて整理してみたい。
まずはルールの文章に立ち戻ることから始める。
4.2 イベントでの手順省略
イベントでの手順の省略とは、プレイヤーが特にそう宣言せずにルール上の一連の行動の一部を飛ばすことである。ゲームをスムーズに進行するためには必要であり、これによってルール上の些事にとらわれることなく明確なプレイを行なうことができるようになる。ほとんどの手順の省略は、1回またはそれ以上の回数、暗黙に優先権の放棄を行なうことを含む。優先権の放棄を含む手順の省略を新しく使いたい場合、その宣言の一部として最終的なゲームの状態がどうなるのかを明確にすること。
プレイヤーは、省略されている一連の行動の途中で、どのようにして、またどの時点でその行動から逸脱するのかを宣言し、中断させることができる。この方法で、自分自身の行なっている省略を中断することも認められている。宣言されていない手順の省略を用いたり、一般に用いられている手順の省略を勝手に変更したりして、ゲームを曖昧なものにしてはならない。
プレイヤーは優先権を要求し、何もしないことを選んではならない。何もしないことを選んだ場合、優先権は要求されなかったものとして直前に優先権を持っていたプレイヤーに戻される。
マジックで伝統的に用いられている手順の省略として、以下のものがある。それらから逸脱したい場合、そうすることを明示するべきである。また、例示の中には、暗黙に優先権を放棄することをもたらすという点において上記のポリシーに反するものがある。
(途中省略)
・自分のターンの戦闘前に、「戦闘」「攻撃」などの単語を使った「戦闘入ります」などの宣言をした場合、非アクティブ・プレイヤーが止めない限り、戦闘開始ステップにアクティブ・プレイヤーがパスした、ということを意味する。非アクティブ・プレイヤーは望むならその時点までの任意の時点でパスを中断し、何か行動することができる。
「戦闘入ります」はここから引用した。ルール上箇条書きで定められているショートカットは、基本的にはすでにその意味について合意されているものと見なされる。「それらから逸脱したい場合、そうすることを明示するべきである。」というのはそういうことを意味している。
だから、「戦闘入ります」という発言は、「戦闘開始ステップまで入ってパスします」と言っているのと全く同じ効果をもつ。
相手がそこまで何もしなくてそのショートカットを中断させないのであれば、ゲームの状態は、戦闘開始ステップで相手が優先権を持っている状態になる。
相手が「はいどうぞ」と言ったとすれば、それはすなわち相手がパスしたと言うことだ。
ここで、ゲームは攻撃クリーチャー指定ステップに移る。
ここでやることはまず攻撃クリーチャーを指定することであり、ここで優先権は発生しない。つまりあなたには攻撃クリーチャーを指定する前に機体に搭乗したり土地を起動したりするタイミングはない。
それが、最初のツイートの意味である。
なお戦闘開始ステップに何かしたいのであれば、
「戦闘開始ステップ入っていいですか」とか
「第1メイン終了で良いですか」とか
とか言えば良いのだと思う。でもわざわざ戦闘開始ステップに何かする必要があることなんて滅多にないから(《ゴブリンの熟練扇動者》っていうカードはありますが)、何かやりたかったらメイン中にやってしまうのが一番良いと思う。
じゃあ、なぜブロックの時は順序違いの連続行動が認められるのか?
4.3 順序違いの連続行動
マジックのゲームを厳密に表現することの複雑さに鑑み、完了後の結果が適性で明確な局面を現している場合には、技術的には正しくない順番であっても処理を一連のものとして行なうことは許容できる。
正しい順序で行なったと仮定した場合に全ての行動が適正であることが必要であり、また、対戦相手は必要な時点で対応するために、正しい順序で行なうようにプレイヤーに求めても良い。(その場合、それ以降に行なわれる行動は一旦取り消され、そのまま行動する義務は生じない)。順序違いの連続行動によって決定を遅らせ、本来のタイミングではまだ得られていない情報を利用することができてはならない。
プレイヤーは、順序違いの連続行動の途中で対戦相手の反応を見て利用してはならないし、またやり忘れた事をやりなおすために順序違いの連続行動だと主張することも認められない。一般に、一連の行動を行なった後で手が止まった場合、それで行動が終わったものだと判断され、連続行動は終わりとなってゲームは連続行動終了後の対応する局面に進むことになる。
例:
(E) ブロック・クリーチャー指定を始めてから、《樹上の村》を起動してそれでブロックした。
こういう場面を考えてみる。
「これとこれでアタックします」
「うーんとじゃあこれはこれでブロック、これは変わり谷起動してブロック」
これが典型的な順序違いの連続行動の例である。ここで少し考えてみてほしいことは、この場合防御側はブロッククリーチャー指定ステップに入ることを明示的に宣言していない。1つめの発言が終わった時点で、まだ攻撃クリーチャー指定ステップである。だから、本来はこういう順番の行動はおかしいのだけれど(ステップが戻っているから)、攻撃クリーチャー指定ステップで行うことと、ブロッククリーチャー指定ステップで行うことの一連の行動が単に順番が変わっただけだとして認められる。
先ほどの攻撃の例は、すでに戦闘開始ステップで優先権を放棄していることが明示されている。自分が戦闘開始ステップに優先権を放棄した後に起こることは、順に「相手が優先権をパス」「自分が攻撃クリーチャーを指定」であり、その間にあなたに優先権は一回も来ない。順番が違うのではなく、もう優先権を持っていないからそもそもできないことなのだから、順番云々の前に、そもそもそのタイミングではそういった行動(起動)ができない。
ここまでが普通の話。
ここからがよりめんどくさい話。読者を選ぶかもしれない。本当にめんどくさい話なので、もし議論などあればtwitterなどでなく直接お話ししましょう。どうしても気になってしまったので書く。
じゃあ、防御側が「ブロック入っていいですか?」と相手に確認を求めてから上記の行動をしたらどうだろう。
そもそも「ブロック入って良いですか?」は相手に何を確認しているのだろうか。自分は何をしたものと宣言しているのだろうか。
攻撃クリーチャー指定ステップで攻撃クリーチャーが指定されたら、まず優先権を持つのは攻撃側である。でも普通攻撃側はここで何かすることはない。
「ブロック入って良いですか?」=「あなたは攻撃クリーチャー指定ステップで優先権をパスしますか?」だろうか。でもそういう解釈の場合、
(防)「ブロック入って良いですか?」
(攻)「はいどうぞ」
(防)「じゃあブロック宣言前にまずそれを除去して・・・」
(攻)「えっブロック宣言するんじゃないの」
となるかもしれない。少し日本語としてもやもやする。上記のショートカットがあるからなおさらである(ブロックの方は規定されたショートカットでもなんでもないので単純に日本語としての解釈の問題だが)。
普通攻撃側が「ブロック入って良いですか?」といわれたら、それは「ブロック宣言しますがいいですか」という意味だと取ると思う。それはゲームルール的に言い換えれば、「あなたはパスしますか?それなら私もパスします」と言っているのに等しい。こっちの解釈の方が、まあ自然だと思う。防御側がパスしたらもうブロッククリーチャー指定ステップに入ってしまう。すると上記の攻撃時と同じことが言える。
だから、「ブロック入っていいですか」の後に、「ブロックブロック搭乗ブロック」と言われたら、ちょっと待ってそれ搭乗できるの、と言うかもしれない。
これは、「ブロック入って良いですか」の言い方が、ルールと少し整合していないのが理由なのだと思う。「あなたはパスしますか?それなら私もパスします」と言うのはあまり合理的ではない。だって相手がパスするかどうか聞いてから判断した方がいいから。
たとえば、防御側は単に「なにかありますか」「なにもありませんか」 とか言ったりすればいいのかもしれない。つまり相手がパスかどうかを確認したいわけだから。でも普通は攻撃側は攻撃クリーチャー指定ステップに何かすることは少ないから、何もないようであればその確認すら必要ないことの方が多いかもしれない。
ただ、このあたりはちょっと考えが整理できていない。自分も「ブロック良いですか」とか普通にプレイで言ったりするから。
ただいずれにしても、自分がミシュラ土地であったり、機体であったりをコントロールしている場合は、少し発言には気をつけて、ステップをきちんとイメージして、はっきりとした意思表示をした方が、不利なルーリングになる可能性はぐっと低くなるかもしれない。
興味がある人は僕はBMOの日曜日にジャッジで行くので、そこで捕まえて話しかけてください。
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